虫歯を放置することのリスク

初期の虫歯は痛みがほとんどなく、様子を見ようと放置してしまう方は少なくありません。しかし、適切なケアを怠ると時間の経過とともに進行していき、放置した時間に比例して治療の負担が大きくなる傾向があります。
虫歯を放置することの具体的なリスクには次のものがあります。
- 痛みが強くなる
- 口臭が強くなる
- 歯の根に膿がたまる
- 歯の神経が死ぬ
- 歯の神経が死ぬ
口腔トラブルを引き起こすだけでなく、食事や睡眠、仕事への支障といった生活の質にも影響を与えてしまうのです。ここからはそれぞれのリスクについて詳しく解説します。
痛みが強くなる
初期の虫歯は冷たいものや甘いものが少ししみる程度で、強い痛みはあまり感じません。この時点では痛みを我慢できることも多く、治療をつい後回しにしがちです。
虫歯が進行するとズキズキとした拍動性の痛みが生じ、何もしていなくても強い痛みを感じるようになります。痛みが原因で夜眠れなくなる・食事がとれない・仕事に集中できないなど、日常生活に支障が出るケースも少なくありません。
一時的に痛みが治まることもありますが、これは虫歯が治ったわけではなく、ダメージが歯の神経まで及んでいる可能性があります。
口臭が強くなる
虫歯を放置すると、虫歯の中で虫歯菌が増殖し、歯の内部組織が腐敗していきます。この過程で発生するガスが強い口臭の原因となり、独特の強い腐敗臭を放ちます。
特に、虫歯によって象牙質(ぞうげしつ:歯の内側の層)が露出していたり、歯の神経が死んでしまった場合の口臭は非常に強烈です。歯の内部組織が腐敗していると、歯磨きやマウスウォッシュなどで口臭を改善するのは困難です。
口臭は自分で気づきにくいうえに、対人関係やコミュニケーションに影響することもあります。親しい間柄でも指摘しにくいため、口臭が強くなる前に虫歯治療を始めておきたいところです。
歯の根に膿がたまる
虫歯がさらに進行すると、虫歯菌が歯の根の先まで到達し、膿がたまることがあります。膿を放置すると歯ぐきの腫れや強い痛み、発熱、顔の腫れ、しびれといった症状が現れることもあります。
歯の根に膿がたまっている状態は、虫歯が重度化している明らかなサインです。この状態では歯ぐきを切開して膿を出す処置が必要で、歯の状態によっては抜歯や大がかりな処置を行うこともあります。
歯の神経が死ぬ
虫歯が歯の神経に達すると、強い炎症が起こり、激しい痛みを伴います。その後、さらに炎症が進むと神経が壊死し、痛みが一時的に消えることがあります。
重度の虫歯で痛みが一時的に消えるのは、虫歯が治ったからではありません。歯髄壊死(しずいえし)といって、歯の内部で感染が進行している深刻な状態であることを意味します。
神経が死んだ歯は細菌感染が広がりやすく、歯の根の治療や抜歯が必要になることもあります。治療の難易度や再発リスクが高く、治療期間も長期化しやすい点は虫歯を放置する大きなデメリットだといえるでしょう。
病気のリスクが上がる
口腔内には多くの細菌が存在しており、虫歯や歯周病を放置すると体をめぐる血液を通して全身に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、虫歯や歯周病は糖尿病と相互に悪影響を及ぼす関係にあり、血糖コントロールを悪化させることが知られています。心臓疾患や感染性心内膜炎、誤嚥性肺炎、脳血管疾患、妊娠中の早産・低体重児出産などとの関連も指摘されています。
悪玉むし歯菌と微小脳出血との関連が報告されていることからわかる通り、虫歯は口腔内だけの問題ではないのです。
参考:国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「『悪玉むし歯菌』と『微小脳出血の出現』との関連を解明脳卒中の機序の解明に寄与」
虫歯を放置すると死亡率が上がる?
虫歯そのものが死亡率を上げると断定できる明確なエビデンスはありません。しかし、虫歯を長期間放置して重症化した場合、命に関わる病気につながるリスクがあることも無視できません。
虫歯が進行すると歯の内部や歯の根に細菌感染が広がり、炎症や膿が慢性的に続く状態になります。細菌が血液を通して全身へ広がると、全身感染を引き起こす可能性があります。
以下に虫歯との関連が指摘されている病気をまとめました。
感染性心内膜炎:虫歯菌などの細菌が血液を通して心臓の内膜や弁に感染し、重篤な状態になることがある。特に、心臓に持病がある方は要注意。
敗血症:重度の感染が全身に広がり、臓器障害やショックを引き起こす病気。非常に稀なケースとして、放置した歯の感染が原因となった事例が報告されている。
誤嚥性肺炎:口腔内の細菌が唾液や食べ物とともに気道へ入り、肺炎を起こすことがある。高齢者は特にリスクが高い。
糖尿病や心臓疾患の悪化:慢性的な炎症は免疫機能に影響し、血糖コントロールの悪化や心血管系への負担につながる可能性がある。
このように、虫歯を放置することで間接的に重い病気のリスクが高まる可能性は否定できません。頻度としてはそれほど高くありませんが、虫歯は口の中だけの問題ではないという視点を持つことが大切です。
参考:一般社団法人 日本循環器学会「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」
10年以上放置した虫歯は手遅れで治せない?
長期にわたって放置した虫歯が手遅れで治せないということはありません。ただし、状態が悪いことが多いので、治療が複雑化したり長期化する可能性は高いでしょう。
虫歯が神経まで達している、もしくは歯の根だけが残っている状態は、詰め物で治療するのがほぼ困難です。神経を取り除いたり、歯を残せないと判断されれば抜歯も必要です。
抜歯後はブリッジや入れ歯、インプラントで対応するとなると、治療期間が長くなるだけでなく費用負担も大きくなります。
状態によっては歯を残せる可能性があるケースもあるので、もう無理だろうと自己判断をせず、できるだけ早く歯科医院にかかることをおすすめします。
けいおう橋本駅歯科室では、できる限り歯を残す治療を重視し、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療方法をご提案しています。早期受診が悪化を防ぐ第一歩となるため、長年放置してしまった虫歯でお悩みの方はまず一度ご相談ください。
虫歯の進行度
虫歯の進行度はC0〜C4の5段階に分類されます。見た目や痛みの程度から、ご自身の虫歯の状態を知る目安としてご確認ください。
痛みのない軽度の虫歯
歯の表面がわずかに溶け始めている脱灰(だっかい)と呼ばれる段階です。C0では歯に穴はあいておらず、痛みやしみる症状もほとんどありません。
見た目の特徴としては、歯の表面が白く濁って見えたり、以前と比べて透明感がなくなったと感じることがあります。この段階では、正しいブラッシングやフッ素ケアを継続することで削らずに経過観察となる場合もあります。
虫歯の状態を自己判断するのは難しいため、歯の色の変化に気づいた時点で早期に歯科医院を受診することが大切です。
エナメル質の虫歯
歯の一番外側にあるエナメル質が虫歯に溶かされている状態です。強い痛みはありませんが、歯が白く濁る・薄い茶色や黒っぽく見える・舌で触れるとザラザラした感触があるなどの変化がみられます。
C1の段階であれば歯を削る量が少なく、詰め物などの比較的軽い治療で済むケースが多いです。早期に治療すれば、通院回数や費用の負担も抑えられます。
象牙質に達した虫歯
虫歯がエナメル質の内側にある象牙質まで達した状態で、冷たいものや甘いものがしみるようになります。
歯の表面には黒や茶色の変色が見られ、進行すると小さな穴があくこともあります。また、細菌の増殖により口臭が強くなるのもC2以上の虫歯にみられる特徴です。
C2の治療は詰め物や被せ物になることが多く、C1に比べて治療範囲も広がります。過去に治療した詰め物の下で、気づかないうちに虫歯が進行してしまうケースもあります。
歯の神経に達した虫歯
虫歯が歯の神経まで達すると、歯に黒や茶色の穴があき、見た目でも虫歯と分かる状態になります。
C3の虫歯はズキズキとした強い痛みがあり、何もしていなくても痛みが続くつらい時期です。この段階では、神経を取り除く根管治療(こんかんちりょう)が必要になります。
一時的に痛みが消えることがありますが、それは神経が壊死している可能性があるからです。放置すると歯の根に感染が広がり、さらに重い状態へ進行します。
根だけ残った重度の虫歯
歯の頭の部分(歯冠)が崩壊し、歯の根だけが残っている重度の虫歯です。神経が壊死すると痛みは消失しますが、歯ぐきの腫れや膿、噛めないといったトラブルが起こりやすくなります。
歯の根の先には細菌がたまり、歯を支える骨を溶かしてしまうこともあるため、多くの場合は抜歯が必要になります。抜歯をすると歯を失った後の治療(ブリッジ・入れ歯・インプラントなど)も検討しなければなりません。
長期間放置した虫歯の治療法
長期間放置した虫歯は重症化しているケースが多く、歯を残して治療できるか、それとも抜歯が必要かを考えます。この判断は見た目だけでは難しく、レントゲンやCTなどで歯の根や周囲の骨の状態を詳しく調べなければなりません。
ここでは、歯を残せる場合と残せない場合に分けてそれぞれの治療法を解説します。
歯を残せる場合は【根管治療+被せ物】
歯の根が割れておらず、感染がコントロールできる状態であれば、根管治療によって歯を残す選択をします。
根管治療とは、虫歯で感染した歯の神経や内部の組織を取り除き、歯の根の中をきれいに消毒・洗浄する治療のことです。根管治療と被せ物で対応する場合の流れは以下の通りです。
- 感染した神経・組織を除去する
- 根の中を消毒する
- 薬剤を詰めて密閉する
- 被せ物で補強する
歯の根に炎症や膿がある場合は、すぐに被せ物を入れず、消毒や投薬を繰り返しながら慎重に治療を進めていきます。治療は数ヶ月に及ぶこともありますが、自分の歯で噛める状態を維持できるという大きなメリットがあります。
歯を残せない場合は【抜歯+補綴治療】
歯が大きく崩壊している・歯の根が縦に割れている・感染が重度で周囲の骨まで影響しているようなケースでは、歯の保存は難しく、抜歯が必要になります。
抜歯後は失った歯を補うために補綴(ほてつ)治療を行います。補綴治療の主な選択肢は以下のとおりです。
ブリッジ:虫歯の両隣の歯を支えにして人工歯を固定する方法
入れ歯:取り外しできる人工の歯を装着する方法
インプラント:顎の骨に人工の歯根を埋め込み、天然歯に近い噛み心地を目指す方法
歯牙移植:状態の良い親知らずを移植する方法
どの治療法が適しているかは、年齢や口腔内の状態、費用面、ライフスタイルによって異なります。歯を失った場合でも選択肢は複数あるため、歯科医師と相談しながら治療方法を決定します。
虫歯治療の費用相場
虫歯治療にかかる費用は、保険診療か自費診療か、また虫歯の進行度や選択する治療法によって大きく異なります。以下に治療法ごとの一般的な費用相場をまとめました。
詰め物:数千円
根管治療:数千〜1万円
クラウン(被せ物):自費診療で5万〜30万円
ブリッジ:保険診療で1万〜3万円、自費診療で5万〜20万円
入れ歯:保険診療で数千〜2万円、自費診療で3万〜200万円
インプラント:自費診療で30万〜40万円
クラウン(被せ物)やブリッジの費用は、素材や使用する本数によって大きな幅があります。自費診療では、より審美性や噛み心地に配慮した素材を選ぶことができます。
入れ歯については部分入れ歯と総入れ歯で費用が異なりますが、保険診療で対応できるケースが多いことがメリットです。
このように比較してみると、抜歯が必要になる治療ほど費用も高額になりやすいことがわかります。虫歯を「痛みがないから」「面倒だから」という理由で放置をせず、費用負担が軽いうちに治療しておくことが大切です。
まとめ
虫歯が自然に治ることはなく、放置する時間が長くなるほど状態は悪化していきます。
初期の虫歯は比較的軽い治療で済みますが、重症化すると根管治療や抜歯、補綴治療によって費用負担が増えてしまいます。
たとえ長期間放置してしまった虫歯でも、治療の選択肢がなくなるわけではありません。大切なのは自己判断で諦めず、できるだけ早く歯科医院を受診することです。
早めの治療が歯を守り、健康な生活を続けるための第一歩になります。
けいおう橋本駅歯科室では、いつでも気軽に通える地域の歯科医院を目指しております。「虫歯があるかも」「痛みが気になり始めた」という方は、当院までお気軽にお問い合わせください。
けいおう橋本駅歯科室 院長
石川 典弘
患者様が安心して治療を受けられるよう、丁寧な説明ときめ細かなコミュニケーションを大切にした診療を行っています。「素敵な笑顔で生活してほしい」という思いのもと、平日21時まで・土日祝日も診療する体制を整え、幅広い患者様のお口の健康をサポートいたします。
経歴
- 1992年:鶴見大学歯学部 卒業
- 1992年~2002年:東京都内の歯科医院 勤務
- 2003年:けいおう橋本駅歯科室 開院、現在に至る
